ビジネス時事通信Vol.17…【36協定】

36協定

決算期特有の忙しさに巻き込まれてしばらく記事を書けないでいました。
久々に書くのは36(サブロク)協定についてです。

さすがに皆さん36協定は知っていると思うので、
以下のPDFに割愛してしまいます。

36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針

以前2024年問題として運送業のドライバーの労働時間規制の話を取り上げましたが、
社会全体として労働時間規制は強くなってきています。
有給休暇の最低年間5日間取得であったり、違反の厳罰化などですね。
なぜそういう向きに進んでいるのか解釈は様々だと思いますが、
それによって何が起こっているかというと、
いっぱい残業(時間外労働)をして時間外手当をもらっていた人が、時間外労働の規制によって時間外手当が少なくなり
一人当たりの収入が少なくなっている
という実態があります。
加えて、ちょっと前に世の中の副業ブームみたいなことも喧伝されていましたが、
これを全体を見ると、世の中全体の仕事が定量だとしたらそこに占める人件費コストが下がることになります。
企業が儲かって、そこに働く人の収入が下がるみたいに見えますね。
ただ単純にそういうわけでもなくて、給与の最低賃金はどんどんラインを上げられています。
最低賃金に肉薄するお仕事、一般に飲食などサービス業などは賃金が低い傾向がありますが、
そういうところはかなり苦しくなっているという印象です。
給与の財源は変わらないですから、ただ引き上げると足りないわけです。
調べると比較的収入の多い管理職以上から若手社員に給与を付け替えるといったことが発生しています。
この傾向は会社規模が大きければ大きいほど顕著になっていて、
上司も部下も給料がそこまで変わらないという社会になっています。
本格的に「出世したくない社会」の到来でしょうか。


話を36協定に戻します。
私が若いころは時間外手当を一切もらえない、今の3倍時間外労働させる会社で働いていたことがあります。
それによって心身のバランスを崩したり、世の中を恨んだり(笑)したこともありましたが、
そういった会社はここ20年くらいで大きく減ったのでいい方向に変わったなという印象があります。
ただ逆にこれによって若手社員に対し危惧すべきことが起こっています。

①経験を積めない

自分が20代の若手のころはプライベートもないままにひたすら働いていたので、相当な成長スピードがあったと思います。
以前にも紹介しましたが1日に携わる業務が増えれば増えるほど機会が増えて仕事の質が高くなります。
昨今では労働時間規制があるので、会社全体で早く若手社員を帰そうとします。
このことは若手社員の成長機会を奪ってしまうことになるのです。
昔は終わるまで帰れませんでしたが、今は残業時間が計算されない上司が引き受けて帰れなくなるように世の中設計されています。

②耐性が無い

若手社員はさっさと帰すとはいえ瞬間的にでも忙しくなるタイミングは存在します。
しかし普段から残業を行っていない社員からすると相当な心理的な負荷がかかるようです。
我々の時代は~と言いたくなりますが、そういう時代に働いていた経験があるからこそ、
目の前の残業は大したことないと思って頑張れるものです。
体育会系の部活動経験者が採用時に好かれると求人サービスの営業から聞いたことがありますが、
まさにこういう時に経験が生きるからだと思います。

③高いレベルの生産性

時間の制約が厳しくなればなるほど時間当たり生産性が要求されます。
昔の人は時間外手当を貰えない反面、時間がルーズだったので、休み休み進めることもできたのですが、
制限時間が決まっているとものすごい効率を求められます。
休む時間も働く時間も決められその中でミスなく早くやるということです。
ただし、上述の①のとおり質の高い仕事は多くの業務をこなすことで獲得することを考えると、
やはり成長に時間がかかってしまい、生産性を求めて時間を制約しているのに、
結果的に生産性が向上しないというジレンマを抱えます。

④業務時間外で成長するしかない

残念ながら労働時間規制は若手社員の成長の機会損失につながり、
若手社員自体も不幸にしてしまう可能性があるのです。
一番成長しなければいけない時期に経験を積めなくなってしまうのです。
これを若手社員の目線で解消するとなると、プライベートでコツコツ勉強するしかないのです。
今まで時間外手当を貰って成長の機会も与えられたものが、
お金を払って自己研鑽しなければ成長できなくなった(成長が遅くなった)と考えられます。

いずれにしても世の中の変化は速い。速すぎる。
やらなければならないことは増えるが働くなと言わんばかりに時間規制される。
どうやって折り合いを付けたらいいのでしょうか?
若い人にどんな夢を語ればいいのでしょうか?